山海経と蜀の仮面と盛り盛りの髪
ドラマ前半でちょいちょい取り上げられる山海経。
中国最古の地理書という解説がありますが、どうなんですかね。
24話で、巴蛇を「楚」蛇とわざと間違えたり
39話では和氏の璧の箱の謎解きのキーワードでした。 蜀の始祖・開明帝って!!
で、ですよ。
古蜀国といえば、三星堆遺跡じゃないですか。
三星堆遺跡といえば縦目仮面じゃないですか。
ちなみに縦目仮面は古蜀国で初めて王を名乗った蚕叢(さんそう)王とされているようで、「和氏の璧」の箱の謎解きで出てくる開明帝よりずっとず〜と前の王様。
蚕叢王から始まる蚕叢時代が何百年があって、何とか王の時代も何百年かあって・・・と四川盆地は四川盆地で、蜀があって巴があって、それぞれに独自の政治や文化があったんですね。
ドラマでは蜀の始祖と言ってましたが、実際の開明帝は古蜀国最後の王朝の王様。
15代徳川慶喜は最後の将軍で、何だかんだで江戸時代が終わるわけですが、古蜀国は何代目かの開明帝の時、秦の司馬錯将軍によって終わりを迎えます。
47話はその話で、箱の謎解きは、蜀攻めの伏線のように見えます。
こちらは三星堆遺跡で出土した縦目仮面の小さい方です。
仮面の特徴は、なんと言っても縦に突き出た目なわけですが、それと同時に
中央の飾り❓も目を惹きます。
この飾り
この本で「龍を表すシンボルマークだった可能性が高い」とされています。
中国に限らず文明はすべからく大河の流域で成立しました。(あ、南米とかは違うのか・・・)
中国では黄河文明と同時期かそれ以前に長江流域にも文明が存在していて、三星堆遺跡や金沙遺跡はその証拠。
龍は河川の神様で、その龍をモチーフにした飾りは為政者・統治者の威厳も表すのかもしれません。
それで、ずーと思っていたのです。
『ミーユエ』のお妃様たち、髪がモリモリじゃないですか。
これ、縦目仮面の飾りに似てません?
特に綺麗だったのが羋姝さん。
役者さんのお顔立ちもあって、縦に伸びた飾りが本当に綺麗でした。
個人的に四川省にはものすごく思い入れがあります。
早くコロナ禍が終息しないかな〜
古蜀国については、この本の記述を参考にしました。
戦国四君 孟嘗君は?
春申君の黄歇は準主役でいいとして、平原君は分かりませんでしたが、信陵君は終盤の和平交渉で魏の使者でしたし・・・・・日本で1番人気は孟嘗君でしょ?
孟嘗君、出てました?
世界史で学習するかどうかは社会の選択によって差がありそうだけど、古文・漢文でも登場しますからね。
盗みの上手い食客と、鶏の鳴き真似が上手い食客の活躍で命からがら秦を脱出するエピソードはテストにも頻出。
孟嘗君でピンと来なくても「白い狐のコートを盗んで、函谷関で鶏の鳴き真似した人」と言えば、日本の高校生には結構通じます。
あと、清少納言の歌。
夜をこめて 鳥の空音ははかるとも よに逢坂の関はゆるさじ
これも孟嘗君の逸話から来ているから、孟嘗君の名前はともかく、鳥の鳴き真似した人が昔の中国にいたことは知っている人が多い。
日本では知らない人はいない、とは言わないまでも、結構な割合で浸透している孟嘗君ですが、中国ではそうでもないのでしょうか?
時代がちょっと前とか後とか、この作品では関係ないじゃないですか。
「もうしょうく〜ん!」
と叫びたくなった日本人は、私だけではないはずです!!
管仲とイナゴ投資
名宰相として度々登場する管仲。
「管鮑の交わり」と「軽重策」「塩鉄法」などが有名な方だ。
管鮑の交わりは、親友の鮑叔(ほうしゅく)さんが斉の桓公に管仲さんを推薦した男の友情的な話。
一度は桓公を殺そうとしたこともある管仲さんでしたが、仕えるとなると一転、持ち前の知力で桓公を戦国の覇者に押し上げる。
その時に使った戦術が「軽重策」とか「塩鉄法」だったとか。
庸芮(ようぜい)さんは
と義渠の特産である狐の毛皮を使って簡潔に説明されていますが、軽重策は今で言うところのイナゴ投資のやり方でもありますよね?
買いを煽って値を吊り上げ、上がりきったところで売り抜ける、みたいな。
養分となって焼かれてしまったイナゴさん達を論うSNSを見る事がある。
短期売買はしないし、誰かの言に従って売買もしないけど、やるかやられるかでいけば、やられる自信はある。
だから焼かれたイナゴさん達は他人事じゃない。
『菅子』読んで勉強するかな〜 しないだろうな〜
北京が燕の都だったという事
燕は寒い。
「凍傷で鼻が欠けてる人がいる」と子どもの魏冉が知ってるくらい。
そこが今、中国の首都って驚きじゃないですか?
日本で言えば、札幌が首都みたいなものでしょ。
統一中国で北京に首都が置かれたのは、モンゴル国家の元からと考えると、元寇の舞台だった福岡というのもあります。
いずれにしても端っこすぎますよね?
今だって東京から離れるほど遅れて、置いてきぼりになったりしてるのに、札幌が首都だったら九州は終わりません?
北京に観光旅行した人は、必ずといっていいほど訪れる万里の長城。
万里の長城って、北方騎馬民族に対する最前線の防衛ラインですよね?
そこに行くのに電車で1時間って⁉️
近すぎるっっっ
まあね、モンゴルにルーツのある少数の支配者が、圧倒的多数の漢民族を支配するとしたら、自分の故郷に近い都市を本拠地にしますよね。
それは分かります。
清の満州族も北で暮らしていた民族だそうですし。
でももうそんな時代じゃないし、いくら通信インフラとかが発達したといっても、やっっぱり物理的な距離は埋められないわけで。
位置的に言えば、上海とかを首都にしたらいいんじゃないかな?
余計なお世話ですね・・・すみません。
『ミーユエ』観てると、燕は最果ての国みたいな扱いじゃないですか。
北の小国で、とにかく寒い!みたいな。
それが2000年の間に歴史の趨勢を経て、世界一の人口と世界第二位の経済規模を誇る大国の首都ですよ。
感動とか驚きという言葉では表現できない、圧倒される何かを感じずにはいられません。
男を見る目は確か 羋茵
羋茵さんは『ミーユエ』では一貫して憎まれ役でしたが、この方の男を見る目は見習うべきだと思うのです。
最初に「この人!」とロックオンしたのが黄歇で後の春申君ですよ。
嫁いだ相手は、燕の宰相郭隗。
あの「まず隗より始めよ」の郭隗さん。
すごくないですか?
この方が有能だったから、楽毅将軍とかも来てくれて、けっこう盛り返すわけで。
おバカな燕王が部下に王位を譲るとかやっちまって、あわや燕滅亡か⁉️ってとこまで追い詰められたのに。
羋茵さん、なかなかどうして美人なだけじゃない!
ストーリーの展開上、どうしてもこういう美人の憎まれ役ってのは配置されてしまうわけですが、この方の男を見る目は娘を持つ身として、見習わねば!!と思わずにはいられないのです。
骸骨を盃にされた《智伯》
秦の恵文王による蜀攻めで智伯が出てきてビックリしました‼️
私は数十年前、テレビで「銀河英雄伝説」を観たとき智伯を知りました。
リップシュタット戦役(新皇帝を擁した主人公ラインハルト 🆚貴族連合のブラウンシュバイク公らの武力衝突)で、当然のように貴族連合はボロ負けするわけです。
勝利はないと悟ったブラウンシュバイク公が負け犬の遠吠えとして言います。
「その昔不倶戴天の敵を倒して、その頭蓋骨で盃を作った王がおったという。わしもあのボウズでそれに倣うかな」
とか何とか。
頭蓋骨で盃?で調べて、出てきたのが春秋時代の晋の人智伯でした。
もっとも智伯は、盃を作った人ではなく、盃にされた方の人ですが。
戦国時代に入り『キンダム』では「上中下でいうと中」とされた斉ですが、春秋末期は4大勢力の一角でした。
真ん中の晋が韓・魏・趙に分裂して、時代は戦国時代に突入することになります。
もともと晋は韓・魏・趙と智の4強が支えていて、中でもトップが智伯だったそうな。
にもかかわらずと言うべきか、だからと言うべきか、内紛(?)で最有力の智伯が韓魏趙に負けて滅び、その後、韓魏趙がそれぞれ独立したようです。
時代が春秋から戦国に移るきっかけが晋の分裂。
つまり、智伯が骸骨を盃にされて後、中国は戦国時代に入ったというわけです。
その智伯のエピソードが金牛道に繋がるとは思ってもみませんでした⁉️
個人的には金牛道は秦が蜀を攻める時に整備されたんじゃないと考えているので、何とも複雑な心境です。
函谷関だけじゃない秦の関
『ミーユエ』15話は「祖国との別れ」。
いよいよ舞台が秦に移ってきました⁉️
楚から秦ってそんなに遠いの?
お隣の国なのに?
ウキペディアによると、楚の首都である郢(えい)は湖北省荊州市にあったようで。
そんなに長く険しいのかな? (印は武関)
こういうセリフって興奮します‼️
蕭関は西域へ、大散関は巴蜀(現在の四川省)へ、潼関つまり函谷関は直接には韓なのかな。
そして武関は楚へ。
武関といえば、秦末、劉邦が咸陽入りしたルートでしたね。
ところで、花嫁行列の秦からの護衛武官蒙驁将軍ってあの大将軍の若かりし頃なの?
蒙驁大将軍って、もともと秦の生まれではなくて、戦国の各国を渡り歩いたとかじゃなかったでしたっけ?
キングダムでそんな話をしていたでしょ?
ユエさんが嫁いで来た時には、すでに秦にいて、しかも将軍だったの⁉️
さすがにそれはないか(笑)
春申君が合従軍を率いて函谷関で負けたのって、ユエさんが亡くなって四半世紀くらい後らしいから、そんな時代まで生きてたら蒙驁将軍は100歳越えになってしまいます。
っといけない‼️
いろいろ全部盛りの『ミーユエ』では、厳密な時系列にゴニョゴニョ言うのは無粋でした〜
製作者の方々としては、蒙驁大将軍は何としても登場させたい偉人なのかもしれません。
か〜な〜り連呼してましたよね蒙驁将軍(笑)